ペットボトルでメダカを飼おう

円形吹き出し: 児童のつくった水槽。メダカが3匹います。
 


1.                          研究概要

(1)   はじめに

新しい理科教育の流れとして,@ゆとりの中で「生きる力を」…,A理科における豊かな人間性を…,B「理科離れ」に対応するために,実感を伴った理解を…,などがあげられている。しかし,時間的なゆとりがないとなかなか難しいのではないだろうか。

今年度,5年生では総合的な学習の時間に「米作り大作戦」として,米を中心に学習を進める計画をしている。その中に田んぼを通しての環境教育も考えている。そこで「メダカを救え!」という小単元を設けて,理科の「魚や人のたんじょう」の単元と合科的に扱いながら,時間的な余裕を生み出し,学習を進めていくことにした。今回はメダカを一人一人ペットボトルで飼育するという活動を通して,児童が主体的な問題解決能力や科学的な見方や考え方が育つように,また,子メダカの誕生から生命誕生のすばらしさに気づき,命あるものを大切にする心情を,また責任感を育成したいと考えた。

 

(2)   実践 〈5年理科 魚や人のたんじょう〉

@             一人一人の主体的な問題解決活動を重視するために

→児童一人一人がペットボトルでメダカを飼育する。

→わからないことを図書室やインターネットで調べる。

 

A             科学的な見方や考え方を育成するために

→失敗例やすばらしいつぶやきは全体の課題として取り上げる。

→人間に置き換えて考えるように支援する。

 

〈指導の流れと児童の反応や出てきた課題〉

@             導入 単元全体の見通しなど「メダカを見たことある?」

「お父さんと○○に取りに行って,家で飼っている。」「絶滅しかけって聞いたことがある。」

 

A             一人一人ペットボトルでメダカを飼ってみよう。

「やったー。」「でも,すぐに死ぬんちがう。」

 

B             水槽を準備しよう。

「ペットボトルをどう置けばいいの?」「やっぱり川の水がいいのかな?」「土も川底の砂利がいいと思う。」「図書室で調べてみよう。」「インターネットで調べてみよう。」「水草はいるのかな?」

 

C             メダカを3匹ずつ水槽に入れよう。

「このメダカはオスかな?メスかな?」「名前をつけてあげよう。」「オスとメスのどっちもいるんとちがう?」

 

D             エサをあげよう。

「(市販のエサを)どれだけあげたらいいの?」「調べたら糸ミミズと書いてあったよ。」「(稲の観察に出かけて)先生!田んぼに糸ミミズがいます。取ってかえっていいですか。」

 

E             卵を産ませよう。

「卵を産んだ!やったー。」「卵を産まないと思っていたら,オスばっかりだった。」「オス1匹にメス2匹がいいみたい。」「先生,親メダカが卵を食べています。」「卵を別にした方がいいのかも。」「卵ってけっこう硬い。」「なんかネバネバしてくっつく。」

 

F             卵を顕微鏡で観察しよう。

「すごい!動いている!」「血が流れている!」「心臓が動いている!」「目が動いた!」

 

G             子メダカを観察しよう。

「先生産まれました。やったー。」「先生,子メダカがエサを食べてくれません。」

 

H             全校のみんなに知らせよう。

「卵の中の様子をビデオにとって見てもらおう。」「勝手にエサをやる人がいて困るからお願いしよう。」「産まれたばかりの子メダカがなんでエサを食べないか発表しよう。」「手でさわるとなぜだめか,わかりやすく伝えよう。」…

 

 

 

(3)   児童の感想

 ○A児

はじめにメダカが来ると知ってうれしかった。そしてメダカが来て、手作りの水そうに3びき入れた。1ぴきはメス、2ひきはオスだった。メスの名前はあんどうさん。オスの頭の色がこいやつは、さいとうさん。オスの頭の色がうすいやつはすずきさんだ。4日ぐらいで卵を産んだけど、すぐオスに食べられた。それが何回も続いたので、卵を持っているあんどうさんだけ別のカップに入れて、その中に水草を入れたら、卵を産みつけてくれた。そのとき初めて卵をさわれた。でも、カップの中はフンがいっぱいあった。そのまま卵は成長して肉がんでも目が見れるようになった。そして、「○○さんの産まれとるでー。」と聞いたとき、とてもうれしかった。本当に産まれていた。そして、泳いでいた。すごい感動した。今も子メダカは生きている。エサも食べるようになった。これから大きくなるのが楽しみだ。

B児

 最初のころは「死なないかな。」とか、「エサの量はどのくらいだろう。」とかで、不安でした。メダカがやってきた日はドキドキしました。メダカを見るとだいだいっぽい色だったので「初めて見るな。」と思いました。メス1ぴき、オス2ひきでした。観察していくうちに特ちょうが分かりました。1ぴきのオスはメスと仲良しで、時々エサの取り合いをしていました。もう1ぴきのオスは、1ぴきだけで別行動をしています。飼ってから1週間ぐらいたった日、メダカが卵をつけていました。「やったー。」と思いました。みんなのメダカもつけていました。けど、親メダカが卵を食べてしまいました。たぶんエサが少なくて卵を食べたんだと思います。そして4週間ぐらいたったら、子メダカが産まれました。すごいうれしかったです。夏休みになったら家に持って帰るけど、学校と同じように育てたいです。

 

2.                            成果や今後の課題

Ø             児童一人一人で飼育することについて

                人任せにすることはできないので一生懸命世話をしていた。また,児童には「自分のメダカ」という意識が強く,最後まで責任を持って世話をしようとしていた。全体を通して意欲的に活動できた。

                時間的な余裕が生み出せたことも児童にとって大変よかった。

                わからないことが出てくると,初めは友達に聞いていたが,それでもわからないことが出てくると図書室へ調べに行ったり,インターネットで調べたりする姿勢が見られるようになった。

                一人一人が課題ごとに見通しを持って,予想を立てさせることがなかなか難しかった。ワークシートなど工夫が必要であった。

                 

Ø             メダカがほとんど死ななかったことについて

                今回はほとんど全員が子メダカをかえすことに成功した。メダカは熱帯魚屋から買ったが,病気にかかりにくいように薬浴をしてくれたり,アドバイスをしてくれたりした。そのことも成功の原因であると考える。

                エサのやり過ぎや手でさわることがいけないわけを,人間にたとえて考えたのが良かった。

                どちらかというと成功しすぎである。もう少し失敗例があった方が科学的な見方や考え方を育てる課題が出てきたのかもしれない。

                 

Ø             児童の生命への関心について

                児童は毎朝水槽をのぞき込み,卵をとったり,エサをあげたりしていた。とても楽しそうだった。子メダカが産まれたときや,卵の中を顕微鏡で観察したときはとても感動したようだった。心情面からもよい体験になったように思う。